弾丸




夜中、突然双子の兄が飛び起きた。おかげでこっちまで目を覚ましてしまうくらい激しく、飛び起きた。

「どうしたの亮」
「あ、あつし」
首をかしげる。僕がなに?
「…淳を銃殺する夢、見た」
「へええ、なんだよそれ」
「寝る前に見た映画だ、あれのせい…」

冷や汗を浮かべた亮は枕元のマグカップをひったくり、僅かな残りを飲み干した。
「まったく、久しぶりに帰ってきたらこれだ。まさか毎日僕を殺す夢見てんじゃないだろね」
「いやそんなまさ…え?」

目をぱっちり見開いて、亮が驚く。今ので完全に目が覚めたのではなかろうか。
「なんで俺の布団にいんの」
「久しぶりに帰ってきたんだもん…折角だから」
ううん、と頭を抱える亮。その向こうの時計は深夜1時。
「ね、僕はどう死んだの」
「うえ…聞くなよ」
夢占いなんかに当てはめたいワケじゃないけれど、ねえ亮?僕をどう殺したの?
「教えて」
「…さっきの映画みたいなやつ、てのひらサイズ」
「うん」
「あれで額」
ふうん、それでどう?どう血が出たの。問う前に亮が再び口を開く。
「ああ俺もう寝る、おやすみ早く寝ろ」
「亮に起こされたんだけど」
…返事は無い。
明日彼はこのことを忘れているかもしれないなあ、ぼんやり思う。
ねえ亮?亮は気分悪そうに話していたね。
だけど僕はこんなに鮮明に。リアルに。弾丸を詰めて、安全装置は単射、引鉄に指を。
「あーあ…僕まで銃殺を夢に見ちゃいそうだよ、亮」
眠る片割れを眺めてみる。髪を散らして眠る亮。僕と同じ顔の亮。

ねえどうして僕を?

亮、見せてあげたい。こんなに鮮明だ、このてのひらに。
弾丸を詰めて、安全装置は単射、引鉄を、