コール11,20
3コール目で繋がった部屋は随分と賑やかだった。ひんやりと、携帯電話が耳を冷やす。 「あっ、亮?」 弟の声の裏側で、聞き覚えのある彼の親友の声もする。亮から電話みたいだーね! 「やあ。賑やかだね、お誕生日会?おめでとう」 「そうだよ。亮も誕生日おめでとう」 部屋から出たのか、急に静かになる。ちょっと悪かったかな、ふと考えたけど、どうせ彼らとは毎日会ってるんだ。そう思い直して言葉をつなぐ。 「サエたちと、プレゼント送ったから。楽しみにしてろよ」 「ほんとに?ありがとう」 「受験勉強は進んでる?」 「推薦だからそんなに勉強はしてないかな…亮こそどうなのさ」 「一応西高目指してる。ぼちぼちやってるよ」 「ふーん。みんなはどう?」 10分位ぽつぽつと雑談をして、電話を切った。 黒い画面に白い文字。時間と料金が淡々と。それも消え、液晶画面に自分の顔だけが映る。 昔はずっと隣に居て、互いが今何をしているか、なんだって分かっていたのに。 今じゃこうして辛うじて声を聞くだけ。そしてそれも、ボタンひとつで簡単に途切れてしまう。 寂しくないワケないし、夜中まで行われる誕生日会が羨ましくないワケもない。 だからと言って自分がどうこうできるワケもない、する気もない。 静かで冷たい冬の部屋。 いつの間にか文字盤12で重なっていた2つの針が、音をたてて動きだした。 |