セカンドインプレッション





「携帯持って来ちゃいけないんだー」

夕方のバス停、声に顔を上げるとそこには同学年の女子が居た。「校則違反!」なんて言いながら近付いてくる。
そういえば1年の時に同じクラスだった時以来、話したことは無いようなヤツ。
「いいだろ別に」
俺の横に立つ。2人きりのバス待ち列ができる。
すると悪びれもせず画面を覗き込んできたもんだからぎょっとする。
「見んなよ」
「首藤くん、前は真面目かと思ってたけど、髪染めてるし校則破ってるし」
「いいだろ別に」
「それさっきも言ったー」
なんだコイツは。とりあえず携帯を畳む。
「…首藤くん」
「なんだよ」
「とりあえずアドレス交換から始めましょうか!」
そう笑うと、ヤツはピンクの携帯電話を自分の鞄から取り出した。
「おいおい、人のこと言えねぇじゃんお前」
「いいでしょ別に!さ、アタシ先に送るからー」
言いつつ俺も携帯を出す。赤外線機能を起動させる。
「いくよー」
くっつくかくっつかないか。携帯同士を近づけた。覗き込む頭も同時に近づく。…長い髪が柔らかく香っていた。
木更津亮、俺の画面で初めて見る名前。『登録しますか?』そういえばコイツ、リョウって名前だったっけなあ。
思って俺は、自分のアドレスを送りにかかる。
「あっ、きたよーありがとね」
ピンクを畳み、木更津はじゃあね、と言って去ろうとする。
「アタシバス通学じゃないんだよね。アドレス、ありがと」

…走って去る長髪の揺れ方だとか、クスクスと癖のある笑い方だとか。少し喋っただけでなんとなく気になってしまう俺は、まだまだガキなのだろうか。
…メールは女子から来るのを待つか、俺からしてしまえばいいのか。
俺の脳裏には結局、バスに乗っても家についても木更津の姿がチラついていた。