モダン・サタンの証明




あたしが彼の所に通い出して早一年。彼がアイツに夢中になってから約半年。
オウジサマ・もといヒョウタを横取りして行った男色野郎、どうにもいけ好かない金髪の。今日もまた死んだ魚の目をして、いつもの様に惰性の様に、あたしの愛しいヒトを抱くのだわ、ああ憎たらしい!そしてそれを容易く受け入れる、と言うより自ら望んでアイツを求めるあたしの王子様!
無神論を唱えてみれば神の敵も存在しないのですか、有神論を振りかざしてみれば神の敵も自ずと存在するわけですね。
だなんて比喩するには、あたしもアイツも大分役不足であるし、悪魔とそれを重ねてみるにしろそれに惑わされた王子を想えばなんとなしに敗北感。兎にも角にも敗北か。

炭坑の入り口で、一面を色付ける夕陽の穏やかに染まりながらあたしは今日も帰りを待つ。月が昇っても沈んでもきっと帰らない彼を待つ。
もしも神がいて悪魔がいて目に見えないところであたし達の愛まで干渉していたら。あたしと彼、彼とアイツ。運命の強さの度合いを操作していたら。
あたしの言い訳にそれらは幾度も幾度も登場し、他力本願やら責任転嫁やらにとても役立ってくださった。

彼が悪魔か?
結論の始まりに達したときにあたしは漸く敗北を認める気になっていた。
だから月が西に埋まる頃にいよいよ立ち上がって、冷たい空気を実感して、おとなしく帰路についた。
誰が悪魔だ?