※バトロワパロ。狩屋と霧野。殺人描写や死ネタがあります。お嫌いな方はスクロールしちゃダメです。 ※定番の黒背景赤文字でお送りします。目に優しくないですがご了承ください。 罪と罪
びゅうびゅうと風が鳴る。狂った大人の箱庭の中で、オレと狩屋は二日ぶりの再会を果たしていた。 命を賭けた遊びはもう48時間も行われている。張りつめた神経を解すことは、仲間に再会できた喜びくらいじゃできなくなっていた。 油断した。散弾銃は今バックパックの中だ。 「霧野センパイ、生きてて良かった」 いつもみたいな悪戯な微笑を、今は信じて良いのか悪いのか、分からない。 「狩屋、お前、その剣」 「ゴメンナサイ、やっちゃいました」 血に錆びた短剣に吐き気を催す。しかし誰が彼を責められよう。お前だって銃口を何人に向けてきたんだよ、自問自答する。 「それじゃあ・・・」 ゆっくりとバックパックに手を伸ばす。と、狩屋が待ったをかけてきた。 「最後まで生き残ろうなんて、最早思ってないです」 狩屋はそう言うや否や、短剣とバックパックを湿った地面に転がした。両手を挙げて降参のポーズをとり、笑った、オレを真っ直ぐと見据え。 「正直霧野センパイに会った時点でゲームオーバーですよ」 「・・・どういう意味だ?」 「キレ―なお顔をキズモノに。したくないって意味です」 こんなときでも人をおちょくろうとする精神には脱帽だ。こんな状況で丸腰になれる勢いなんかにも。布越しに伝わる散弾銃の冷たい呼吸。バックパックのそれを、如何に足元の剣より先に起こすことが出来るか。シュミレーションを幻視、気が滅入る。 「そんなこと、言ったって」 「早く、殺すか逃げるかしてください」 「なんなんだよ!クソッ!」 にらみ合い、は長くは続かなかった。へらへら笑ってんじゃねーよ!貼り付けた笑顔を浮かべる狩屋に足元の小石を蹴りつける。狩屋の頬にそれは命中した。 「オレ、本気なんスけど」 狩屋は取り落した短剣をオレの足元へ蹴ってきた。 「あんたに会うために生き残ってきた。神童先輩も、オレが殺した」 ・・・神童?殺した・・・?耳を疑う。 「かり、や、が?」 声が掠れて出る。神童。殺した。放送の無機質な音声とノイズ混じりの“犠牲者のお知らせ”がフラッシュバックして踊りだす。 神童拓人、死亡。シンドウタクト、シボウ・・・。足元の短剣がニヤニヤと血糊を光らせている! 「うっ・・・うえ・・・げぇっほ、」 胃液の熱が食道を逆流してきた。たまらず嘔吐する。狩屋は動じずにただ立っていた。コイツは、オレも殺すだろう。 オレは、オレは、コイツを殺さなくてはならない。殺さなくてはならない。 「・・・・・・狩屋・・・殺してやるよ、お望み通りにな」 「早く、お願いしますよ」 バックパックに手を伸ばす。重たい武器。これから人を殺すもの。狩屋は笑っていた。 「・・・っに笑ってんだよ!死ぬんだよ!お前は!神童を殺したならお前は死ぬしかないんだよ!何が殺してくださいだ?お前は元々死ぬしかなかったんだよ!笑ってんじゃねえよ!」 自分の絶叫に胸が熱く厭な気分になる。しかし狩屋の表情は変わらない。内臓が沸騰しそうな気分に再びの吐き気を催す。 「死ね!!!」 ダララララ・・・銃弾が走る激烈な音に冷たい空気がつんざかれる。狩屋の体はゆっくり宙を舞い、不思議に体を歪ませながら、血飛沫をまき散らして固い地面に背中を打ちつかせた。 どくどくと流れ出ていくかつてのチームメイトの命。取り返しのつかない、ことを、した、と、今改めて感じ、もう吐くものは無いというのにげえげえと喉が鳴く。 「狩屋」 身体は動かない。声はもうここにない。 「狩屋、狩屋」 びくん!と体を一瞬反らして、力なく地面に横たわった。 狩屋が死んだ。狩屋を殺した。 「違う・・・だって、狩屋は神童を、オレは・・・でも・・・う、ううう」 がくんと膝が落ちる。血塗れの後輩に触れようとして、やめた。血の匂いが充満している。強い風なのに散っていかないほど。 「もう・・・イヤだ、もうイヤだ、もうイヤだ、もうイヤだ・・・」 もう、イヤだ、でも、腕が止まらない。狩屋の持っていたバックパックを、まるで憑りつかれでもしたかのようにあさる。 まだ残っている食料や、誰かから奪ったのか銃弾の予備とか刃物とか、そういうものを次々自分のバックパックにしまった。 オレは最低だ。だけど仕方ないじゃないか。オレは生きたい。生きたい。生きたい。・・・本当は、みんなと、生きたかった。 「・・・狩屋」 本当言うと、お前の事、むかつく後輩だと最初思っていたけれど、本当は、本当は好きだったよ。 殺してごめん。殺してごめんな、だけど、もう何もかも遅いし、出来る事なんて何もない。ごめんな。 「ごめんな」 (いっそ罪が殺してくれたら) |