張り裂けそうこの恋心




 好きでしたよ。ずっと大好きでしたよ。
 その言葉を放つタイミングを、いつもいつも図って決めて、止めて黙る。
 風丸さんが好きなんです。この際性別なんてどうでも良い。風丸さんは格好良くて、強くてきれいで素敵だ。
 春四月、一目見たときからこうなる事はきっと決まっていた。
 恋を。とびきりの恋をしていた。



「おはよう、宮坂」
「風丸さん!おはようございます!」

 朝練が終わってホームルームまであと数分の下駄箱は、タイムセールの騒々しさだった。
 大量の学ランの中から風丸さんは僕を見つけてくれた。すごく、嬉しい。

「助っ人の調子はどうですか?」
「ん?ああ、なかなか楽しいぜ、サッカー!」

 笑った顔がとっても素敵。本当に楽しそうだった。
 恋っていうのは異性にするだけじゃなくて、陸上にもサッカーにも、同性にもできちゃったりする。
 風丸さん、まさかサッカー好きになっちゃったんですか。僕はずっと変わらず風丸さんが好きですよ、えへへ。
 今日も、飲み込む。


 僕は風丸さんを好きだということを誰にも言わなかった。風丸さんに言うつもりも無かった。ただの先輩と後輩で、充分楽しかったんだ。
 それでもこんな事態になったのはアレだ、本格的に風丸さんがサッカーに惚れてしまったから。
 サッカーをする風丸さんも、とても格好良かった。仕方ないからサッカーよ、風丸さんを貸してあげましょう。
 だけどお願い、どうせなかなか会えなくなるのなら!
 玉砕覚悟で僕は、一世一代の告白を決行することに、した。



 来てください、と言った時間より僅かに早く僕は大舞台についた。時間通りに風丸さん。

「あの、あのですね」

どきどきどきどき。心臓が爆発してしまいそう。

「ぼっ、僕」
「ん?」

 胸が苦しいのに、なんだか嬉しい気がする。意味が分からないね。玉砕覚悟で来たのにさ。

「風丸さんが、大好き、です!」

 きょとんとする風丸さん。言ってしまった、言ってしまった。男の子同士でこんなこと言うのは、変だって知っている。ただの楽しい先輩と後輩関係が、終わってしまった。ふふ、風丸さんが微笑んだ。

「好き、か」
「は、はいっ」
「オレも、宮坂が好きだよ」

 あれ、おかしい、そんな筈無いじゃないか。風丸さんが僕を好きに。(告白しておいてなんだけど)そんな筈ない。ただの後輩として?そうなのかな。

「本当に…えっ、あの、告白」

 混乱しきった脳髄にとどめの一撃。好きだ、宮坂。くしゃり。撫でられた頭。
 優しい笑顔が僕を撃つ。張り裂けてしまいそうに、好き、好き。大好き風丸さん。
 僕は心の奥底から思った。風丸さんを好きになってほんとにほんとに良かった、って!
 鳴る心臓、全身が熱くて堪らない。ふと気付くと風丸さんの顔が真っ赤で、それがとっても嬉しかった。







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