眩しいのです




最近おかしいんですの。
どうやらわたしはおかしくなってしまったみたいですの。
前まで楽しくみんなでしていた恋バナが、どうしてか楽しくなくなってしまったんです。
リカに、好きな人ができてから。

わたしだって惚れっぽいリカが早く運命の人を見つけて幸せになればいいな、って思っていた筈なのに、リカが彼の話をする度に。みんなが彼にリカの話をする度に。彼がリカに微笑みかける度に。
わたしの胸の奥からぐずぐずと音がするんですの。苦しくてもやもやして悔しい。
それがわたし自身よく知っている感情だったから尚更、どうしてなのどうしてなの、と辛かったのです。

それは嫉妬でした。恋、でした。

こんなの気の迷いだって分かってます。ありえないの。リカは女の子で、お友達だから。
だから早くこんな叶うことのない恋なんて忘れておしまい!
わたしは一生懸命念じますの。毎日毎日。

だけど日ごとに日ごとに、リカはきれいになっていく。可愛くなっていく。明るい笑顔も仲間思いなところも、きらきらきらきら輝きを増して魅力的なんですの。
だからわたしはリカを目で追ってしまう。ドキドキしてしまう。
こんなの気持ち悪いですよね。女の子のお友達に恋をするなんて。だから誰にも、言えませんの。




ある日の、練習帰り。
途中から別れていくみんなの帰り道、いつも歩道橋からはリカと道子とわたしだけ。
だけど道子が「今日は家族で外食なの〜」ってとっとと帰ってしまいましたの。
うわあ、ふたりきり。
妙に緊張してしまったわたしの肩をぽんぽん、リカは軽く叩き「帰ろか」にっこり笑いましたの。



「あー!あの兄ちゃん、めっさイケメンやーん!」
通りの向こうのお兄さんを指差して、リカが突然叫びましたの。

「なんだかのっこが好きそうなタイプですの」
「あー、せやなあ」

夕日です。きらきら、きらきら。
リカがきれいすぎて苦しいのは、きっと太陽があまりにも眩しいからですの。

「ねぇリカ」
「なんや?」
「手を、繋いでもよろしいです?」

あっ!博美何言ってるですの?そう(心の中で)慌てていると、頭の後ろで組まれていたリカの右手が、わたしに差し出されました。

「ええで、繋ご繋ご」

手が、結ばれます。
さらさらしていて柔らかいてのひら。わたしは緊張で手汗をかいてしまわないか、どうでもいいことまで心配になりました。

「わたし、リカの手好きですの」
「博美〜褒めたってなんぼも出さへんでー」

腕をふらふら、前後に揺らしだしたリカ。歩調に合わせてふらふら、わたしの腕も一緒に踊りましたの。

「もちろん、」

あ、急にドキドキしてきましたの。違うの、違うんですのよ!

「もちろん、リカのことも好きですの」

ふふふ!リカは肩を震わせました。

「アッハッハ!何言うてんの、ウチやって博美、めっちゃスキやで!」

当たり前〜!リカは目を細めて爆笑していました。
そうじゃない、そうじゃないんですのよリカ。
だけど決して決して、理解しないでくださいね。


ねぇリカ。叶わない、決して言えない恋があることをリカは知っていますの?
繋がれたてのひらを想って、わたしは今までで一番胸が苦しくなりました。

大好きですのよ、リカ。

叶うことのないその想いが自然に溶けてなくなるまであとどれくらい、かかるのでしょうか。