七夕
「寺門ってけっこー恥ずかしい奴な」 本当に恥ずかしい。後悔している。反省もしている。 オレ最大の願いが書かれた長方形をひらひらさせる佐久間は、ニヤニヤとオレを笑った。 「え〜なになに、『さきや…』」 「バカヤロ、音読すんじゃねェよ!」 佐久間から紙をひったくろうとするも、奴はそれをヒラリとかわす。 「こんな楽しいもの返すかよ」 「遊ぶなよ!」 「…っつーか、何で書いちゃった上に吊しちゃったの?」 佐久間が呆れた風に聞いてくる。 そう…書く、吊す。短冊に願いを書いて、七夕の笹にそれを吊して。それだけならまだ普通だ。問題は内容。 「…なんつーか…一番上なら良いんじゃねぇか、って」 「オレも、一番上なら良いんじゃないかと思ってこれ用意したのに…」 そう言って佐久間がオレに水色の短冊を突き出した『××を○したい』(※××君の名誉を守る為、適当な箇所を伏せる)。 「見つかったのがオレで良かったな、寺門」 「…良かった、のか?」 ああそれと。佐久間がニッと笑いながら言い去る。 「ソレ、叶ってるから吊す必要無し!じゃーな」 …え?聞き返す間も無く佐久間がドアから出て行く。え、なんだって?……叶ってる。まじでか。 勝手に笑いを零す口元を覆いながら、佐久間が置いて行ったオレンジ色の短冊を見る。 『咲山と両想い』 ……ちょっと咲山を七夕祭りに誘ってくる。そんで今夜、人生初の告白でもしようと思う。 |