この春





 あなたは最後まで良い先輩のままだった。だから僕も最後まで可愛い後輩のままでいた。

「先輩、2年間ありがとうございました」
「オレの方こそ、楽しかった」

 空は青々と。澄んだ空気に溶けてゆく喧騒、ひとつ上の先輩たちの卒業式がさっき終わったところ。

「僕、風丸さんと一緒の高校行きたいなあ」
「ホントか?ちゃんと勉強しろよ」

 半分ウソ。一緒の高校、憧れるけど僕は我慢できるのかな。どうせ何も言えないなら、側に居たって辛いだけ。
 風丸さんに彼女でもできたら、笑っておめでとう…今日みたいに、こんな風に?無理だよ。

「でも僕、風丸さんみたいに頭良くないですし」
「なら教えてやるって、いつでもメールしろよ」
「わぁ、ありがとうございます!」

 桜が散る頃にでも、都合良く忘れられたりできないだろうか。
 この気持ちだけ切り取って、ただの憧れだけを残して、普通に騒いで笑って女の子の話をしてもし彼女ができたら心の底から祝った、り

「風丸さん」
「ん?」
「…お元気、で」

 そしてウンと大人になってから、実はあの頃こんなにあなたが好きだった!なんて酒の肴にしてみたりね…引かれるかな。

「…宮坂も」

 ああ、あなたはきれいに笑うんだ。ズルいくらいきれい。
 結局僕は永遠にあなたを好きなままでいるような気がする。言えなくても、辛くても。桜よ、試しに散ってみておくれ。僕は馬鹿だと思い知らせてやってくれ。