飛行機





 飛行機を見送った。僕はこれから家に帰る。風丸さんはこれから世界のサッカー選手と戦ってくる。僕は家に帰ってご飯を食べて宿題やってお風呂に入ってぐっすり眠る。風丸さんは島に着いたら、何をするのか、分からない。僕が知ることのできる風丸さんは、もうテレビとかインターネットとかに写るそれだけだ。世界中の人が同じ風丸さんを見る。僕だけの風丸さんじゃない。残念だけど仕方の無いことだ。
 次の日の夜、国際電話が僕に掛かってきた。

「もしもし、宮坂?」

 ぱあっと辺り一面に花が咲く。うわあ、うわあどうしよう、風丸さんだ!でも、どうして?

「見送りありがとう」
「いっいえそんな!」
「お土産でも買うよ、何がいい?」

 声の上擦った僕を少し笑いながら、風丸さんが素敵な質問をくれた。
 でもなんだか、申し訳ないなぁ。
 そこでふと思いつく。

「…イナズマジャパンの優勝を!」
「えっ」
「勝って帰って来てください!僕、テレビでだけどずっとずっと応援してますから!」
「…ああ、任せとけ!」

 あとは近況なんかを話して、それから電話を切った。僕は嬉しくて嬉しくて、にやにやそわそわしてしまう。
 風丸さんにしてみたらほんの些細な電話かもしれないけど、僕にとっては大事件だ。嬉しい、すごく、嬉しい。
 イギリスチームに風丸さんに似た選手が居て、一緒に観戦していたマッハ先輩がヒイヒイ笑っているときまだ僕は、風丸さんが素敵なお土産と共にハグをくれるなんて想像もできなかった。
 風丸さん、頑張ってください!テレビに向かって僕は叫んだ。